枝野代表の政権構想私案に

 立憲民主党枝野代表は、5月29日、「支え合う社会へ―ポストコロナ社会と政治のあり方(『命と暮らしを守る政権構想』)」(私案)を発表しました。
 YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=CGuzZz_IvFg)でプレゼンテーションを見ることができます。わたしも一昨日見て、安心をしました。安心した、というのは、失礼な言い方に聞こえたかもしれませんが、こういう意味です。

 わたしが立憲民主党長野県第5区総支部長になった経緯は、立憲民主党から打診があり(2019年1月)、しばらく逡巡したものの、他にもっと適任の方がいないのなら、と受けたのですが(同3月)、その際は、立憲民主党の考えを詳しく知ったうえでそれに共感したから、というわけではなかったのです。
 勿論、立憲民主党の政策綱領は一読し、自分の考えと相違するところがないことは確認しました。しかし、立憲民主党の政策に惚れ込んだというよりも、安倍政権の横暴をこれ以上放置しないためには、自民党の国会議員を減らすしかない、そのもっとも可能性が高く手っ取り早い方法は、立憲民主党から立候補することだろう。そう考えた結果です。
 それから一年以上経過したわけですが、枝野代表の直近の構想を聞いて、自分の考えと同様であることを再確認できて、安心した、というわけです。

 枝野代表のお話は、上記のYouTubeで見ていただきたいと思います。後半は記者との質疑で、構想のプレゼンテーションは最初の20分ほどです。
 内容は、新型コロナがさまざまな課題を明らかにした、と認識し、それを前提にこれからの社会をどうつくるべきかという構想です。極簡単にかいつまめばこういうことです。

 新自由主義的な考えで、効率を追い求め、小さすぎる政府(予算的な意味ではなく)にした結果、暮らしを支えるマンパワー・組織体制が非常に脆弱なものになってしまった。新型コロナはそれを明白にした。それを反省し、今後は医療、格差貧困対策、福祉など、暮らしを支える施策をしっかりと厚くせねばならない。競争を強いて結果は自己責任だと突き放す社会ではなく、支え合う社会にしていかねばならない。

 全く共鳴する主張であり、安心した所以です。
 とはいえ、構想をさらに補強するために、いくつか感じたところを書いておきます。

 枝野代表は、再分配の強化も主張しています。ただ、プレゼンテーションでは、その主眼はリスクとコストの再分配にあるように聞こえました。再分配といえば、当然、富の再分配が主眼のはずですから、これは言わずもがなとして言及がなかったのかもしれませんが…。
 記者からの質疑でベーシック・インカムも話題になりました。「誰に対しても生存に必要な所得を保障すべきという考えには、共感するが、実現は遠く、それまでは、現金給付よりも現物給付を充実させるべき」との回答でした。しかし、これは言い方の問題ですが、同じ内容でも、「実現には時間がかかるので、まず当面は現物給付を充実させながら、研究していきたい」というようなポジティブな表現にした方が、主権者の心に刺さると思いました。
 小さな政府については、自民党政権は、実際には赤字国債を発行し続け、累積赤字をGDPの2倍を超えるまでに増やしながら、お友だちには税金を横流しし、トランプ氏に言われるまま爆買いをしていますから、まじめに財政再建を考えていないことは明白です。にもかかわらず、保険医療体制や教育予算、福祉を削り、貧困問題を自己責任だと放置するために、財政赤字を口実に使っています。ですから、財政赤字があってもしっかりと暮らしを支えるために必要な体制をつくることは可能である、と示すべきではないでしょうか。MMT(現代貨幣理論)や公共貨幣について、理論的研究を進める、というだけでもいいと思います。
 日本のみならず、各国とも程度の差こそあれ財政問題を抱え、国民に必要なサービスを提供できていないのですから、なんとかこの問題は克服しなければなりません。「解決策は必ずある、それを見つける」という決意を示し、主権者が希望もてるようにすべきだと思います。

 また、国民へのサービスを削り、国民負担を高めても財政を健全化できない根本の理由のひとつは、グローバル資本にきちんと対処できていないことだと思います。資本が、国境をまたぎ国家の枠をはみ出して活動するようになった結果、資本を制御できるものがいなくなってしまいました。グローバル資本にまともな課税ができていないだけでなく、グローバル資本の前に国家がひれ伏し、進んで便宜を図るような状況に陥っています。グローバル資本は、自分に都合のよいビジネス環境をつくるため、国家に法制度を変更させ、国家を集金装置として利用しています。(例えば、TPP。また、種子法廃止や種苗法改定の背景にある知財権・特許権の強化による市場支配もその例です。)富はますます資本に集中し、民は貧しくなります。

 コロナ後の社会にどう対応するかが議論されています。枝野代表の構想もその問題意識に基づいています。しかし、コロナは、もともとあった課題を露呈させ、対応の緊急度を上げただけではないかと思います。つまり、問題はコロナがもたらしたのではなく、コロナ以前から悪性腫瘍のように広がっていたいたのです。今、資本主義自体が終焉に差し掛かっているのかもしれません。あるいは、新しい資本主義が必要なのかもしれません。いずれにせよ、大きく深い問題意識で考え、克服しなければなりません。地球温暖化や格差・貧困などのさまざまな課題がありますが、グローバル資本こそ問題の元凶のひとつであり、それにどう軛をかけるかが、今後の大きな政治課題になると思います。国家は、資本の側ではなく、国民の側に立って、この状況を克服しなければなりませんし、国家は互いに手を携えて、世界の人々のために共闘しなければならないと思います。

* MMT、公共貨幣については、https://itsuro-soga.com/2019/12/21/公共貨幣 経済・財政の視野を広げてみる/ を参照ください。
* ベーシック・インカムについては、「ベーシック・インカムは妙案かも」http://mujou-muga-engi.com/b-income/ を参照ください。

ご意見、ご批判をお聞かせください。 2020年6月1日  立憲民主党長野県第5区総支部長 そが逸郎
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