一昨日(2020、9、13)、飯田市龍江で行われた「リニア発生土置き場候補地、現地見学会」に参加しました。
清水沢川を工業団地の脇から下流にかけて埋めるという計画で、長さ約600m、巾105m、高さ35m、搬入量は、約40万立米だそうです。
『龍江の盛土を考える会』では、大規模な土砂流出が発生することを危惧していました。気候変動によって豪雨災害の頻度が上がっている中、下流域にはいくつもの集落があり、万一の場合には、甚大な被害が心配されます。地形の特徴から、地震などの際には、表層ではなく、底面から崩落する危険性もあるようです。
地元へのメリットは、工業団地につながる道のカーブが一か所改良できること以外には見当たらず、盛土によってできる平坦地の利用計画もないのに、なぜ前のめりになるのか理解できない、と「考える会」では首をかしげています。
中川村長の立場でJR東海と交渉したわたしとしては、工事終了後の維持管理を誰がするのかが明確になっていないようであることも気にかかりました。
盛土の下流部は、安定勾配1対1.8~2.0の傾斜にして、崩壊を防ぐための大規模な構造物は造らないとのこと。そうであれば、小規模な土砂流出などが日常的に発生するであろうし、大規模な崩壊を防ぐにはこまめな維持管理がますます重要になります。それを誰がするのか。
中川村長時代に聞いたJR東海の回答は、「安全性を納得してもらった上で、引き渡す」というものでした。つまり、「引き渡し後の責任は、引き受けた自治体にもってもらう」という意味です。
JR東海の考え方が変わっておらず、また地元メリットが大きくないのであれば、飯田市は慎重に考えた方がよいと思います。

しばしば質問を受けるので、リニア新幹線についての考えも書いておきます。
大都市を点と点で超高速で結ぶというビジネスモデルは、もはや古臭いものになりつつあると思います。例えるなら、大艦巨砲主義の象徴、航空機に沈められた戦艦大和のように。完成の見込みは予定よりずれ込むようですが、その時にはどのように受け止めらることになるのでしょうか。
また、昨日の見学会にも来ておられた地質学の松島信幸先生がいつも仰っておられるように、山に大きな穴をあければ、甚大な結果をもたらしかねません。動植物や地域住民の暮らしへの影響も心配です。
中川村長の当時、工事の進め方について、住民の生活環境を損なわないようJR東海に繰り返し求めましたが、いつも杓子定規かつ事務的な回答で、住民の暮らしへの影響に気を配ろうという姿勢は感じられませんでした。沿線各地で住民が我慢を強いられることになりはしないかと危惧します。
加えて、これはJR東海にとってはよけいなお世話かもしれませんが、リニア新幹線の採算性も心配です。もともといぶかる声がありましたが、今、新型コロナの影響で、新幹線の利用は減っています。ITを使ってリモートで仕事をすることが新しいスタイルとして定着していく中、今後の事業見通しを再検証する必要があるのではないかと思います。
JR東海が単独で独自事業としてやるのならいざ知らず、安倍政権は、大阪への延長にむけて、巨額の国費も投入するとしました。甘い見通しによってJR東海の経営が行き詰って、投じた税金が無駄になる事がないように、きちんと検証しておくべきでしょう。
リニア新幹線の成否のみならず、例えば飯田線のような今ある路線までが、経営不振を理由にして、駅の無人化にとどまらず廃線ということにでもなれば、地域住民は生活の足を奪われてしまいます。そんな事態を招いてはなりません。
リニア新幹線が地域にもたらすかもしれない未来を夢見る前に、採算性を再検証する必要があります。住民の暮らしや自然環境に悪影響をもたらさないように、JR東海には、法制度さえ守ればよいという姿勢ではない良心を持ってもらわねばなりません。自治体も過度に心踊らさせず、長期にわたって住民に不利益がもたらされることのないよう、目配り気配りをしてもらわねばならないと考えます。
中川村長時代は、外部資本に過剰に依存せず、村の可能性を活かした内発的発展(特に住民の個性が発揮されること)をめざそうと考えていました。風土を大切にし、住民がのびのび活躍するかたちで、地域の持続可能性を育むべきだと考えます。
国の政策は、地域のそういう取り組みをバックアップするものにせねばなりません。
2020,9,14 #そが逸郎立憲民主党長野5区総支部長
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