農薬は必要不可欠 鈴木直人さんより

 安田節子さんの新著『食卓の危機 遺伝子組み換え食品と農薬汚染』をインスタグラム(+FB、ツイッタ)で紹介したところ、鈴木直人さんからFBでご意見を頂きましたので紹介します。 2021,3,19



曽我 逸郎 様
メッセージありがとうございます。
元農業関係職種だったこともあり、つい、この本の特に「農薬汚染、今こそ農本主義/有機農業を」の一文に目が行きコメントさせて頂きました。ちょっと長くなりますが、悪しからず。
農業とは自然を開墾し「有用植物(作物)」を人工的に生産する食糧生産で、生業にするためには生産物の安定した供給(収量)を確保する必要がある。また有用植物を栽培するためには雑草(作物との養分競合相手)と病害虫(減収や収穫皆無になることも)との戦いであり、これらの大小は作物や気候・土壌など栽培地によってもかなり異なります。温大昔の農業はムラ(集落)の少人口の食べ物を作るための今でいうところの自然農法でしたが、作物が害虫の被害により収穫皆無になり飢饉(トビイロウンカによるイネの大被害は有名)になることもしばしば。このように農業は昔から収量増及び安定供給のための病害虫防除、栽培方法、作物品種開発等々農業技術を農業試験場、企業など農業関係機関が開発進展させて来て今の農業形態が存在します。
では、農薬とは何か?農薬は何故使用するか?農薬は本当に危ない?
無農薬で作物を作るとどうなる? 農水省が上手くまとめて記載しているので
→ 農林水産省のホームページの消費・安全局農産安全管理課農薬対策室農薬の基礎知識をご参照ください。(最下位にURL添付)
農薬の使用状況の海外との比較についてですが、日本は温帯モンスーン気候、欧米(国の位置によって異なりますが)は地中海式気候、西岸海洋性気候などが多く、日本は比較的高温多湿で雨が多く、欧米は比較的冷涼乾燥気候のためヨーロッパに比し日本は作物病害虫の発生が多いため必然的に比較的農薬散布回数は多くなることもあること、国によって主作物や食べる作物の種類及び量及び頻度も異なるため海外の農薬使用状況と単純に比較することはできません。
安定した農産物の持続的な供給、ひいては世界の人口の安定的な食糧生産を賄うためには農薬は必要不可欠です。私は有機農業自体を否定している訳ではありません。ただ猫の額ほどの畑で無農薬栽培することは収量を期待しなければ作物によっては可能でしょう。しかし、世界の人口を賄うための農業全ての作物を無農薬栽培することは技術的かつ労力的に不可能です。さらにそれは今の農家に対して過剰な労働力を強いるのも同然です。農薬は使い方さえ遵守すれば安心安全なものです(農水省ホームページ参照)。今話題になっている有機農業、自然農業など無農薬栽培を提唱したかつての方々は戦前の時代です。当時の農薬は確かに人畜毒性が高い農薬も存在していたため無農薬栽培を提唱し始めました。昔と異なり現在の農薬は厳しい基準をクリアした安全性の高いものです。私は、のべつ幕なしに農薬必要だと言っているわけではありません。適正な農薬を使い方を遵守した上で農業には必要最低限の使用は必要です。農薬→危ない→無農薬というように、何故昔の労力的な旧態依然とした農法に戻れという短絡的なご意見になるのか…。現在農薬慣行栽培をしている農家への困惑や、消費者への誤解にも繋がりかねない考えだと思います。さらに言えば有機農業を全世界になどと言うことは、SDGsの中の一つ「飢餓をゼロに:「食糧の安定確保…持続的な農業の推進を」」に逆行することにもなるのではないでしょうか。もっと現在の農薬の安全性(人畜毒性、環境生物への毒性等々)についてもご理解して頂いた上で…例えば「適正な農薬の適正使用遵守の強化」などの方向に行くべきではなかろうかと。
俯瞰的な考えとは、農業とは何か? 農薬とは何か?何故使わなければならないか…等々、これら基本的な事並びに歴史をお知りになった上での多面的な総合的なご意見をと思ったからです。長文になり申し訳ありません。 他にもいろいろお話したいことがありますが、ここではスペースが足りません(既に長いですが)。機会があればまた直接お話させて頂ければ…(笑顔絵文字) ご意見まで。
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html
(2021、3、13?)

 お返事するまえに追伸を頂きました。

(一部略)ところで先日少しお話ししましたラウンドアップ(グリホサート)の現状について、公益財団法人食の安全・安心財団理事長東京大学名誉教授唐木英明さんの分かり易い説明がネット(添付)にありますので、ご参照ください。(一部略) https://agrifact.dga.jp/faq_detail.html?id=3
(2021、3、29)

 先日は飯田で、鈴木さんとは別の方から「荒廃農地の復活には農薬は不可欠」とのご意見を聞きました。お二人とも手ごわい論客のようで、理論武装が必要です。
 農薬を全否定するつもりはありませんが、農薬そのものの研究室レベルの安全性だけではなく、実際にどう使われているのか、社会にどんな影響をもたらすか、中山間地の小規模家族農業、農村集落を守り引き継いでいく視点でどう考えるべきか、勉強せねばなりません。
 どなたか加勢していただければ幸甚です。