「改憲」への向き合い方 国民投票法改正案 

 一昨日(2021,5,11)、国民投票法改正案に賛成したことについて、立憲民主党のWEB会議がありました。
 この件では一部の他野党や市民グループから、また党内からも疑念の声が上がっており、それに応える必要があったのでしょう。実際、会議後半の質疑では、「協力関係にある党外の人たちから問い合わせや心配が寄せられており、それにきちんと答える必要がある」といった発言が相次ぎました。

 会議で説明された概略は以下のとおりです。

* 改正案に全面反対を貫けば、与党の数の論理で強行採決され、原案のとおり可決されてしまう。
* 大阪の「都構想」住民投票では、推進側が圧倒的なテレビCM出稿を行った。改憲においては金の力にものを言わすことができないように規制が必要だ。
* 広告規制を議論のまな板に載せられたことは、成果である。
* また、広告規制について「3年をめどに必要な措置を講ずる」という付則によって、改憲論議をしばらく停止させることができた。(これについては、自民党は違う解釈をしているのではないか、との別意見もありました。)

 説明を聞いて「なるほど」とも思いましたが、技術的戦術論的すぎて、言い訳がましく感じる人もいるだろうと感じました。
 「立憲民主党は政府与党にうまく乗せられて改憲議論のテーブルについたのではないか」、さらには「政府与党となんらかの取引をしたのではないか」とさえ疑う人はおられて、その人たちの誤解を解いて納得してもらうことが必要です。
 与党に対する戦術以上に、立憲民主党への信頼感を大切にせねばなりません。間近に迫る衆院選にむけて共闘・連帯を高めていこうとしている中、疑心暗鬼は困ります。

 そう考えると、国民投票法改正案への対処という局所的なテーマではなく、憲法改正について立憲民主党はどう考えるのかをしっかりと主権者に伝えることが重要だと思います。

 まず、自民党の改憲案には絶対反対であることを再度明言せねばなりません。
 特に、緊急事態条項は極めて危険です。首相が「緊急事態!」と宣言するだけで、国会とは関係なく内閣だけで法律と同じ効力を持つ政令を発することができます。ドラえもんの四次元ポケットのように、自分たちにつごうのいい政治の道具を思いつくままお手軽につくり出せてしまいます。ジャイアンがドラえもんを手下にするようなものです。
 9条をいじることも許しません。

 次に、憲法改正自体をどう考えるかを示さねばなりません。
 わたしは、今の憲法には統治権力を縛る上でゆるい部分があるので、そこはきっちりと締めなおした方がよいと思います。
 例えば、7条を根拠に首相が恣意的に衆議院を解散できるかのような勝手な解釈ができないようにせねばなりません。
 53条では、議院の要求によって内閣が臨時会を招集する際の期限を定めることが必要です。
 憲法裁判所も新設すべきだと思います。三権分立を十分に機能させるため、訴訟人の個別具体の不利益がなくとも、法制度の一般的違憲性を問える仕組みが必要です。

 しかし、これらにいつ取り組むかは、戦術的に慎重に考えねばなりません。
 自民党が与党でいるうちに改憲の議論を与党とすることは、自民党の改憲の土俵に引きずり込まれる危険があります。主権者に安心感をもってもらうには、「自民党とは、改憲の議論はしない」と宣言することがよいと思います。
 改憲は、政権交代を実現してから。
 それまでは、改憲が必要かどうか、今の憲法のどこがどう問題で、どう変えるべきか。あるいは、変えるべきでないのか。自民党とではなく、主権者と議論すべきです。
 主権者と熟議を重ねて、より深く正しい答えを探る。

 以上を明言し、そのとおりに実行すれば、主権者の信頼が得られると思います。

  2021,5,13
#そが逸郎立憲民主党長野5区総支部長  


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改憲論議は、安倍政権とではなく、国民と

 『全国首長九条の会 結成のつどい』が、11月17日東京で開催される。わたしも参加しているのだが、当日は安冨歩先生の講演会と重なっていて、参加できない。以下のメッセージをお送りした。

 * * * * *

改憲論議は、安倍政権とではなく、国民と

2019,11,11   長野県前中川村長 曽我逸郎

 『全国首長九条の会』の発足、大変ありがたく喜んでおります。ここまで引っ張って下さった役員・事務局の皆さま、真にありがとうございました。結成後は、参加するみんなでスクラムを組み、取り組みを前進させて、安倍政権の横道を止めなければなりません。
 ところが、「結成のつどい」には、同日に飯田市で安冨歩先生の講演会を開催するため参加できず、申し訳ありません。代わりにメッセージをお送りいたします。

 安倍首相は、「憲法改正の発議をしないのは国会議員の怠慢」と主張しました。「改憲の議論に応じないのは怠慢」といった野党への挑発も耳にします。確かに、自民党が改憲論議に誘い込む入口にしようとしている国民投票法のみならず、憲法には不備な部分もないわけではありません。
 7条3項の恣意的拡大解釈によって首相の「衆議院解散権」が既成事実化している点や、53条に定める議院の要求による臨時会の召集に期限が設けられていない点などは、何らかの対応が必要でしょう。そのためには幅広く深い議論が必要です。
 しかし、その議論は、安倍政権とすることではありません。野党間で、野党と国民で、国民同士で議論すべきことです。
 憲法は、統治する権力を縛るのですから、縛る側の国民がどのように縛るかを議論すべきです。縛られる側が「こういう縛り方にしろ」と要求するのは、筋が間違っています。9条改憲も緊急事態条項新設も、縄を緩めてやりたいようにやりたいという、縛られる側の思惑です。認めるわけにはいきません。
 あるべき憲法の議論はじっくりと時間をかけて大いにやりましょう。ただし、安倍政権は蚊帳の外にして。国民同士で。

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